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例えば、ワーシュFRB理事がどのような部署につき、そこでどのような仕事をし、どのような識見を蓄積してきたか、そしてスタンフォード大学、ハーバード・ロー・スクール、ハーバード・ビジネス・スクール及びMITのスローン・ビジネス・スクールで何を学んできたかが示されている。
こうした詳細な経歴情報は他のFOMCのメンバーについても同じである。 こうした日米中央銀行の政策決定メンバーの経歴情報に違いが生ずるのは、日本では、日銀の政策委員会のメンバーにそもそも誰も「経済と金融に関する深い学識経験」を求めていないからである。
日本は経済と金融の学識経験が全くない新聞記者でも、「明日から日銀副総裁になれる」国であり、マスメディアを筆頭にほとんどの人がそのことを疑うことのない国で正統派経済学軽視は日銀だけの特徴ではない以上のように見てくると、学識経験の軽視、中でも、正統派経済学軽視は、日銀だけの特徴ではなく、日本において、国民生活に影響する政策立案や政策決定の場に共通している。 わたしは寡聞にして、日銀政策委員会のメンバーの「経済と金融に関する学識経験」の有無を問題にした新聞や雑誌やテレビ番組に接したことがない。
日本のマスメディアは学識経験、特に、正統派の経済学(新古典派経済学とニューケインジアン・エコノミックス)を軽視するという特徴を持っている。 正統派経済学を軽蔑しているといったほうが適切な場合も少なくない。

それにもかかわらず日本は、正統派経済学の知見なしには書けないはずの記事が新聞・雑誌に満載されている不思議な国である。 例えば、わたしが委員を務めたことがある建設省(現国土交通省)の都市計画審議会や住宅宅地審議会では、都市経済学や住宅経済学の専門家は一人(私自身であるが)いるかいないかで、不動産業や住宅産業などの業界代表や建築・都市工学の専門家などが主流であった。
都市計画というと経済学は無縁だと思われるかもしれないが、それは土地という希少な資源をどう利用するかにかかわる問題であり、土地をどう利用するかは私たちの経済生活に大きく影響する問題である。 経済学とは「土地のような希少な資源をどういうモノやサービスの生産のために使えば、国民の福祉が最大になるか」を研究する社会科学である。
したがって、経済学抜きの都市計画や土地利用計画あるいは土地利用規制はあり得ない。 東京圏の通勤難や慢性的な交通渋滞、所得に対して高すぎる住宅価格や良質な賃貸住宅の不足などは、正統派経済学の知見を無視した都市計画と土地利用規制を続けてきた「ツケ」である。
もっと悲惨な例は年金・医療・介護の分野である。 S学習院大学経済学部教授は、日本の年金財政は完全に破綻していること、年金に医療と介護を含めた年齢階級別の負担と受益を計算すると、1965年以降に生まれた人は負担が受益を上回り損していること、例えば、1940年生まれの人は生涯で4850万円も得しているのに対して、昭和38年生まれの人は2250万円も損していること(2005年生まれの人の損失は3490万円)、政治家と厚生労働省の官僚は年金財政をはじめとする社会保障財政問題への本質的対処を避けて、無意味な改革か問題先送りをしているだけにもかかわらず、現在の年金は「100年安心年金だ」といって国民をだましていることなどを、経済学を駆使して明らかにしている。
年金などの財政問題、すなわち、誰がどう年金保険料を負担し、どれだけの年金を受け取るかをどのように決めれば、世代間の受益と負担は公平になり、年金制度が長期にわたって持続可能になるかを知ることは、経済学の知見と経済学が開発した将来予測方法を用いなければ、できない相談である。 ところが、厚生労働省の改革案では経済学の知見が全く無視されている。

年金を設計する学識経験者の集まりであるはずの「社会保障審議会」のメンバー(2008年4月22日付)には、年金の専門家ではない高齢の経済学者とファイナンスの専門家がいるが、年金を専門に研究している経済学者は一人もいない。 見事なまでの正統派経済学の排除である。
「経験のある者」という基準から選出されたとはいえないこと、および、N氏が審議委員だった時期を除くと、議論が分かれてもおかしくないような状況でも、総裁提案がほぼ全会一致で賛成されてきたことなどから、新日銀法施行後も日銀企画局が金融政策をリードしているのではないかという疑いがもたれることなどを述べた。 そこで、以下では、こうした日銀はこれまでどのように金融政策を運営してきたかを明らかにしよう。
流通して傷んだ札は回収された後、再利用できない形に裁断されてから処分される。 日本銀行の組織と、どのような人が総裁をはじめとする政策委員会の委員に選ばれるのかを説明した。
それでは、そうした日銀の人々はどのように金融政策を決定し、運営してきたのであろうか。 2008年秋口以降、世界経済は未曾有の危機にある。
日本経済も例外ではない。 否、各種の経済統計から見て、主要国の中では、日本経済がもっとも危機的な状況にある。
そうした経済危機にあっては、通常の景気対策をはるかに超える財政金融政策が必要である。 ここでは、財政金融政策のうちの日本銀行(以下、日銀と呼ぶ)の金融政策を取り上げる。
果たして、2008年9月半ばに起きたリーマン・ショック後の日銀の金融政策は、100年に一度といわれる経済危機(以下、大不況と呼ぶ)から脱出する上で適切だったであろうか。 以下では、この問題を日銀の金融政策とアメリカ、イギリス及びユーロ諸国の中央銀行の金融政策とを比較しながら検討する。
イングランド銀行がもっとも積極的であることを示している。 両中央銀行の資産増加率はともにリーマン・ショック直後から08年末まで、急上昇し、一時、それぞれ2・4倍と2・3倍まで増加した。
これは両国とも、銀行経営の大幅悪化などの金融危機が深刻だったため、その危機を封じ込めるには流動性(貨幣)の大量供給が不可欠だったからである。 その後は、金融システムの安定よりも企業金融の支援など実体経済の悪化の防止に重点を置いた金融政策に移りつつあり、FRBとイングランド銀行の09年5月の資産は、それぞれ、リーマン・ショック直前の2・4倍と1・9倍に達している。

一方、ユーロ加盟国の中央銀行であるヨーロッパ中央銀行(欧州中銀)の資産増加率は08年2月までは低かったが、その後上昇し、09年3月にはリーマン・ショック直前の30パーセント増の水準である。 そうした中にあって、日銀の資産はほとんど増えていない。
09年5月の資産はリーマン・ショック直前の2パーセント増でしかない。 こうした中央銀行の金融緩和政策の姿勢の違いを反映して、民間の非銀行部門に供給された貨幣の増加率に大きな違いが生まれている。
日本の貨幣増加率はリーマン・ショック後も一パーセント前後で低迷している。 それに対して、イギリスの貨幣増加率は18パーセント台であり、アメリカでも10パーセント台である。
ユーロ加盟国は英米よりも低いが、それでも、6パーセント程度を維持している。 以上から、英米とユーロ加盟国の中央銀行に比べて、日銀は金融緩和に積極的でないという点で、特異な中央銀行であることが分かるであろう。

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